弾いていいなと思った曲
聴いていいなと思った曲と、弾いていいなと思った曲が違うことってありませんか?
私が古箏をやりたいと思ったきっかけはあの華やかな「战台风」だったのですが、長く古箏に触れていく中で、弾きたいなと思う曲はむしろ落ち着いた曲になっていきました。
古箏とか古琴とかって、もともと例えばお茶を飲みながら歓談しているような場所で、自然に流れていたようなものじゃなかったかと思うんです。会話をじゃませず、それでいて人をくつろがせるような調べ。そのせいかな、伝統的な曲には、似た旋律が繰り返し出てきます。(だから暗譜が難しいわけなんですが〜😅)
気分が落ち込んだ時、やるせない思いにかられるような時に「弾きたい」と思うのは、「寒鸦戏水」。晩秋の寒い日に寒鸦(小さなコクマルガラス)が水辺で遊ぶ様子を描写した曲です。はじめはゆっくりとした旋律が弾き手を曲の中に招き入れます。4の音、7の音の上滑音が、しんとした寒空に寒鸦の声が響き渡るようです。初段から中段と弾いていくにつれ、不思議とエネルギーが溜まってきます。それが終段の快板で一気に爆発!弾き終わった時には何ともすがすがしい気持ちになっているのがわかります。
コンサートホールのような、ちょっとした音を立てるのもはばかられる緊張感の中では何よりも観客をもてなし楽しませる曲が選ばれますが、そういう曲は、時として弾き手としては「疲れる」のです。ジプシーが自然と口ずさむような、歌う人、弾く人をいやす調べ、そんな曲が最後まで自分とともにあるような気がしています。